●プロデューサー田原正聖インタビュー

Q:いつ頃からこの企画を考えていたのでしょうか?

10年以上前ですね。当時はいろいろな意味で実現が難しかったんです。何より『銀英伝』が続いていたし、「歴史もの」の企画への理解も得られませんでした。また技術的に合戦シーンなどが難しく、デジタル化が進んでようやくできるのではないかと目算が立ったわけです。


Q:眞田十勇士を題材に選ばれたのはどうしてですか?

出身が長野だから、というのももちろんあります。実際思いついたのは帰省中に真田町から松代へ抜ける地蔵峠の辺りを車で走っている時でした。
 でもそれはきっかけで、その前から「銀英伝」の面白さの本質が「SF」ではなく「歴史もの」のそれである、と感じていました。田中先生も『銀河英雄伝説』の後、中国やヨーロッパの「歴史もの」へひとつの軸を移されたように、その認識は間違っていないと思います。ですが、アニメというものを考えると海外の「歴史もの」だとキャラクターや事件に馴染みがなく、(もちろん未知の事を知るという楽しみはありますが)エンタティメントとして「一般受け」を狙うなら日本を舞台にしたものの方がいいだろうと考えていたのです。
 それも『銀河英雄伝説』的な世界というとやはり戦国だろうし、戦国で人気があって、なおかつ史実だけではないアニメ的な広がりが持たせられる人物が誰か、と考えると眞田幸村に辿り着くのは必然だったと言えるでしょう。戦国で1番人気は織田信長だと言いますが、信長だったら、アニメで描く必然性がないというか、ドラマで俳優が演じた方がいいだろうと思えます。ですが、幸村には虚実の「虚」が入り込む余地が多いし、「忍者」という素材が実写よりアニメの方が面白くできると思えますから。


Q:眞田十勇士といえば、猿飛佐助らの忍者!を想像しますが、 例えば、手裏剣等といった忍者アイテムや、忍法等は登場しますか?
 又、そういったアイテムを使った派手なアクションシーン等を我々ファンとしては期待しているのですが・・・。

『銀河英雄伝説』は、主人公二人が艦隊司令官という立場上、派手な立ち回りをする機会もなく(『外伝』で無理やり作りましたが)、その意味でアニメ的なアクションシーンを作りにくかったんです。その反省というか、今回は猿飛佐助を主人公にすることで、主役がアクションシーンを演ずることができるというのが大きな「テーマ」なので、当然そこに力点を置きます。
 ただ、リアリティを基本に置くので、所謂「マンガ的」な忍者にはしないつもりです。具体的には「十字手裏剣をシュッシュ」という感じではなく、「棒手裏剣がビシッ!」という感じですが、(全然具体的じゃないか………)


Q:アクション面で参考にした映画やアニメ等はありますか?

この質問は、私ではなく、是非 清水恵蔵 監督に訊いてみてください。


Q:銀河英雄伝説との共通点はありますか?

戦略・戦術の面白さとキャラクターの描き方ですね。会話シーンの雰囲気など、スタッフは脚本の読み合わせなどで「これは完全に『銀英伝』だ」と言っています。キャラクター的にも監督が佐助と幸村の関係をユリアンとヤンの関係(と同じ)だと捉えていると言っていましたし、これは誤解を招きそうなので言っていいかわかりませんが、脚本の河中君は「徳川家康はラインハルトだ」と言っていました。


Q:田原さんの個人HPを見ると「新釈眞田十勇士」は戦国時代の『ベルばら』と有りました。
  下世話な質問で申し訳ないのですが、いわゆる『ベルばら』のようなラブストーリー的な展開もあるのでしょうか?

「史実を背景に架空の人物が主人公になる」という意味合いにおいて作品の性格を説明する際に便利だから「戦国時代の『ベルばら』」と言っていますが、あくまで「陸の『銀英伝』」というのが主眼ですから、ラブストーリーは主要テーマではありません。


Q:映像制作面で新しい技術などが有りましたら、教えて下さい。

今更新しいとは言えませんが、デジタル化のメリットは最大に生かしたいと思っています。例えば合戦シーンは「数」が生命線と言えますが、従来のセルアニメでは限界がありました。それがデジタルになればコピーで数はいくらでも増やせるし、別々の動きを与えた上で(理論上は)無限に重ねることもできます。その辺は活かしたいと考えています。


Q:最後に『新釈眞田十勇士』で、田原さんの「ここにこだわった!」部分を教えて下さい。

基本はフィクションだし、あくまでエンタティメントなのですが、資料調べはかなり徹底してやっています。上田や関ヶ原の現地ロケハンにも行きましたし、「史実」にはなるべく忠実に描こうと思っています。だから歴史に詳しい人ほどいろいろ楽しめると思います。
 ただ、この時代の「史実」はそれほど確かなものがない、というのが調べれば調べるほど判ってくるので、それをある程度見切りを付けると言うか、どの説を採るか、或いは独自の解釈をするか、そういう判断まで理解していただけるとありがたいです。(中途半端に詳しい人は自分が知っている説が唯一絶対の事実だと思い込んでいる場合が多いので、すぐに「それは違う」とか言って来るので)