森功至 写真1 井伊直政役
森功至
Qアフレコは1〜3話、関ヶ原のエピソードが終わったところ。井伊直政は関ヶ原が一番の見せ場になると思いますが、演じてみての感想をお願いします。  

 実はまず最初に、こういう戦国モノってすごく難しいなって思ったんですよ。それで演じるにあたって、僕はこの時代に生きていた人たちの心の内、心の葛藤みたいなもの……つまりこの直政っていう人がどういう人だという史実ではなくて、僕が感じた直政像を出したいなと思ったんです。

 僕は特に時代考証をしたわけではないし、徳川家康の本を読みふけったわけでもない。せいぜい猿飛佐助や霧隠才蔵の、いわゆる単行本のマンガみたいなものを夢中になって読んだことがあるくらいで、それほど歴史というものを勉強していないんでね。けれど、これから勉強するとなるとなにしろ膨大な量だから、とても間に合わない。だから僕は僕なりに、歴史を知らないヤツでも人間の心は表現できるんじゃないかと考えたんです。見てる人も、歴史教科書を片手に番組を見るわけじゃないだろう、ひとつの作品として見るだろうし、その中で東軍西軍のそれぞれの武将たちのもの悲しさ、豪快さを表現していけばいいんじゃないのかなと思ってるんですよ。

Q 演じてみて、直政はどんな人物だと感じましたか?  

 僕ら声優というのは、キャラクターの表情を逸脱しないで、その表情を生かすのが仕事なんです。だけど実は残念ながら、アフレコの段階では絵がまだ全部カラーになっていないので、実際の微妙な表情が分かりづらいんですよ。だからどこまでそれを表現できるかというのは、今の段階(アフレコのみ、オンエアはまだ)では分からない部分があります。テレビ放映が始まって、それを見て軌道修正をしつつ回を重ねていけば、きっとセリフを見ただけで表情などが分かるようになっていくんでしょうね。だから今日で4話目のアフレコですが、完成したものを見ていないので、まだ直政については分からないことがたくさんというのが正直なところです。

 もともと僕はシリーズもので役をいただいても、役柄をつかむのが遅い方なんです。だいたい1クール終わったくらいに見えてくるかなー、分かり初めて2クールが進んで、半年経って分かったころに番組終わっちゃうってことが、ままあるのでね(笑) 今度の井伊直政はどうなっていくんだろうなあというのは、今の段階では想像つかないですね。

 ただね、昔の人ってみんな短命でしょ? 直政もどうやら42歳くらいで早く亡くなっているらしい。いまの時代から考えると想像もつかないくらい短命で、短い生涯の中でいろんなことを成し遂げるパワフルでエキサイティングな部分が、見ている人たちに共感してもらえればいいなあ。

Q 時代劇のセリフ回しの難しさやおもしろい点などを聞かせてください。

 確かに難しいです。今の人で、こういう時代劇のセリフを言える人って少ないだろうと思うんですよ。それだけ勉強になります。普段いい加減な日本語をしゃべっていると、こういう時代劇のセリフを話すと背筋がぴーんと伸びる気がするんですよ。今までいろんな時代劇の作品ってあったけど、ドラマにしてもなんにしても、現代調に近い崩した言葉に置き換える場合が多いじゃないですか。それをこうやって、キチッとした時代劇言葉で話すというのは、見ている人に対してだけじゃなくて、これから声優を目指す人にとってもお手本になるんじゃないかとも思うんです。そういう意味で僕は、自分自身が言葉を理解してしゃべらないといけないと思っています。

 セリフの中には難しい単語とか出てくるんですよね。自分のだけじゃなく、ほかの方のセリフに出てくる言葉も全部辞書で引いて、僕の台本はみんな意味が書きこんであるんですよ(笑) でも、そうしないと話が見えてこないし、理解ができない。そこまでの内容に仕上げてある台本なので、読んでいるだけで受ける感動ってありますよ。ふだん使い慣れていない言葉がたくさん並んでいるんだけど、想像だけで膨らんでいく世界が、時代劇のセリフひとつひとつにはあると思います。

Q 田原プロデューサーの作品には『銀英伝』にミッターマイヤー役としてシリーズ通して出演してらっしゃいましたが、今回、同じプロデューサーの作品に出演なさって、通じるものを感じるところはありますか?

 『銀英伝』はロングプロジェクトだったけど、こちらはまだ始まったばかりだから、そこまではまだ見えないなあ。じっくりと描く作品であるなら、ほんの数話が終わったところで見えてくるものではないだろうと思うんですよ。田原さんの意気込みみたいなものは感じていますが、もし僕が分かるとしたら、もっともっと先のことでしょうね。

 でも出演者の顔ぶれを見ていると、『銀英伝』の時は『銀河声優伝説』なんて呼ばれたけど、今回もいつか『戦国声優伝説』なんて呼ばれる作品になるのかもしれないね。ただこういう戦国ものだからしょうがないんだけど、女の人が出てこなくて、おもしろくもなんともない殺伐としたスタジオです。早く女性に出てきて欲しいと願います!(笑)

Q 最後に、ファンにメッセージをお願いいたします。  

 いま世の中ってすごく荒れてて、いろんな悲惨な事件や事故があったり、政治的にもいろいろあったりしますよね。そんな中で、群集心理がなせる罪深さっていうのかな、ほんとはひとりひとり、みんないい人のはずなのに。戦国のこの時代の中でも、西軍東軍のそれぞれの武将は、部下に慕われたりしてみんないい人かもしれない。だけど政治的な流れの中で敵味方に別れないといけない、そういうもの悲しさみたいな喜怒哀楽を感じ取ってくれれば、きっとこれを見てくれてる人たちはみんないい人になるんじゃないかなと思います。だからまず、脚本に描かれ、我々声優が表現する《心》を感じとって欲しいなと、僕は思います。

森功至 写真2
ありがとうございました